『市民ケーン』と空間の音響 (Part I)

RCA設計のエコーチェンバー(Reverberation Chamber)

前回、「市民ケーンとマッカーサー」という記事で、『市民ケーン』の革新性について言われていることのうち、コートレンズの革新性について考えてみた。当時のアメリカの光学技術をめぐる状況を見渡してみると、見えてきたのは軍事研究の重要な一分野だったレンズコーティング技術が、スピンオフしてハリウッドに恩恵をもたらしていったという事実だった。そしてハリウッドのメジャースタジオの撮影部門は、おしなべてコーティングレンズの開発に積極的であり、『市民ケーン』の撮影監督グレッグ・トーランドもそのなかの一人だったということだ。

今回も『市民ケーン』の革新性について、分析してみたい。今回取り上げるのは《音》である。その中でも《音と空間》のテクニックについて考えてみたい。

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市民ケーンと将軍マッカーサー

 

『市民ケーン(1941)』

「映画史上偉大な映画100」とか「批評家が選ぶ映画100本」とかのランキングの上位に必ず入っているが、一般の映画評価サイトにいくとそれほど星の数が多くない映画がある。たいてい古い映画だ。オーソン・ウェルズ監督の『市民ケーン(Citizen Kane, 1941)』は、映画評論家たちのあいだでは極めて評価が高いのだが、FilmarksやYahoo映画あたりにいくと「Mank見るので予習のために」「古臭い」「当時はすごかったのかもしれないけれど」ということで、平均で星4つに到達しない。まあ、仕方がないことだろう。

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