ハイパーノーマリゼーション

HyperNormalisation (2016) [BBC]

 

ソ連では、国家の重要人物が亡くなったときには、「赤の広場、クレムリンの壁(の下)に埋葬」されてきた。これは、1946年に亡くなった、元ソ連最高会議幹部会議長ミハイル・カリーニンの葬儀の様子である。

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プーチンの証言者たち

 

前回ヴィタリー・マンスキー監督の『Close Relations』を紹介したが、今回は『Putin’s Witnesses (Свидетели Путина, 2018)』を紹介したい。この作品も、dafilmsのストリーミング・サービスで鑑賞可能だ(英語字幕のみ)。
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遠い親類と遠い物語

 

『Close Relations (2016)』[Studio Vertov]

引き続きdafilmsのウクライナ特集からの作品を紹介する。今回は、ヴィタリー・マンスキー監督の『Close Relations (2016)』というドキュメンタリーをとりあげたい。原題は『Рідні』、ウクライナ語で「親類たち」という意味だ。

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ウクライナを映す、ウクライナを撮る

Like Dew in the Sun (2016) [Show and Tell Films]

ウクライナの領土内にロシア軍が侵攻してしまった。私達の多くは、この事態が訪れるのをまるで知らなかったかのように驚いているが、クリミアへのロシア侵攻以来、ロシアの強硬な姿勢は崩されていなかった。そして、ウクライナ国内では内戦状態がずっと続いていた。ドキュメンタリー映画のストリーミングサイト、dafilmsウクライナについての映画の特集が組まれている。少しづつ見ているのだが、この内戦状態について扱った2本の作品を紹介したい(追記:いずれも英語字幕)。

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「富める者への手紙、貧しき者への手紙」

Night Mail スコア

1930年代後半、イギリスのドキュメンタリー映画は、ジョン・グリアソン(John Grierson, 1898 – 1972)のGeneral Post Office Film Unitによって革新的な展開を見せるが、そのなかでもブラジル生まれの映画監督アルベルト・カヴァルカンティ(1897 – 1982)が果たした役割は大きい。彼は、GPOではサウンドトラック担当であったが、その音像世界は、今聞いても斬新なものだ。当時、大学を卒業したばかりのベンジャミン・ブリテン(Benjamin Britten, 1913 -1976)が作曲している作品もあり、W・H・オーデン(W. H. Auden, 1907 – 1973)がまるでヒップホップのように詩を詠唱する『夜行郵便列車(Night Mail, 1936)』は圧倒的なスピード感がある。

面白いことに、『黒水仙(Black Narcissus, 1947)』などで知られるマイケル・パウエル(Michael Powell, 1905 – 1990)は、ドキュメンタリー映画を非常に嫌い、そのことを公言してはばからなかった。

私はドキュメンタリーが好きではないし、一度も好きになったことがない。私はいつもイギリスの映画作家と言い合いになってしまう。彼らがドキュメンタリーの製作することに随分とプライドを持っているからだ。・・・25年間もドキュメンタリーを作り続けて、いまだに連中はストーリーを語ることができない。

マイケル・パウエル インタビューより

(W・H・オーデンとベンジャミン・ブリテンのコラボレーションについて)
マイケル・パウエルが「長編映画を作れなかった人間や失業した詩人」の吹き溜まりだと言って、ドキュメンタリーのジャンルを一笑に付したとき、この2人のコラボレーションのことを考えていたのである。

A History of Film Music, Mervyn Cooke

1930年代が、パウエルにとって不遇の時代だったことを考えると、その頃に「風変わりな」ことをやって、批評家達の注目を浴びたGPOのクリエーター達を面白く思わなかったのかもしれない。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=Ska67lN4Wxw]

『夜行郵便列車』Night Mail, 1936

GPO Film Unit 製作
Dir. Basil Wright, Harry Watt
Soundtrack: Cavalcanti
Music: Benjamin Britten
Poem: W. H. Auden

パセーイク・テクスタイル・ストライキ

『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償(The True Cost, 2015)』は、Zara、H&M、ファーストリテイリングなどのいわゆるファストファッションの擡頭によって、壊滅的な「変革」に曝された繊維・衣料業界についてのドキュメンタリーである。グローバリズムの下に、劣悪な環境で劣悪な賃金・労働条件で労働する人たち(主に女性)の実態をとらえていく。製作者らは(主にアメリカの)消費者が、この生産者たちの状況を知らないことを踏まえ、テーマの一つとして「あなたの服を作っている人を知ろう」という点を挙げている。

今から90年前に、同じ言葉で始まるドキュメンタリー映画がアメリカで製作されている。

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